儚き夢のあと。かつて存在した反対側のホームを見ながら、そう思った。かつての栄華も繁栄も遠い昔になってしまった。今は咲く花がこの路線を美しくしている。
筑前内野を出発、線路の両脇には実りある緑が所狭しとと林立している。列車に乗りながらにして、束の間の森林浴だ。
列車は、右へ左へ弧を描きながら峠道を下ってゆく。その間、鬱蒼たる竹林が景色の主役を務める。若竹や老竹、色や太さ、長さの異なる竹が代わる代わる展開する。
やがて列車は、平地に架かる短い橋を渡る。
視界が開け、遠くに山の稜線を描く。
上穂波に到着した。畦道に水田と山の風景と絵画のような美しさであった。
2020年6月21日 撮影